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疲れているのか、座席に腰掛けるとすぐに目を閉じた青年。
ーー羨ましい。
ただ、純粋にそう思った。
私も、昔はそうだった。
毎日遅くまで働いて、家族が寝静まった中帰宅する。
たまに、無理して起きてくれていると、嬉しい反面、無理させてすまないと後ろ向きな気持ちになったりして。
そんな家族も、私にはもういない。
定年後から始めたトレッキング。
毎週のように夫婦でどこかしら行っていたけれど、妻が亡くなってからは随分久しぶりだ。
一人でも、それなりには楽しめる。
楽しめるけれども、真っ暗な家に帰って、誰にも「おかえり」と言ってはもらえない。
淋しいものだ。
だから、私は君が羨ましい。
家に帰って、「おかえり」と言ってもらえる君が……。
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