魔法の言葉

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通勤列車の硬い椅子に腰掛けながら、ぼーっと考える。 毎日毎日、理不尽な事で怒られて、せっかくの休日も、その半分近くを潰されて。 生きるために働いてるのに、これじゃあ、働くために働いてるような、変な感じだ。 ふと気付くと、目の前に、座りそこねたのだろうか。 座席に腰掛ける僕を、羨ましそうに見つめる初老の男性がいた。 大きなリュックを背負い、手に荷物を持つ彼は、山にでも行ってきたのだろうか? ーーこんな時間まで遊んでれば、そりゃ疲れるわな。 でも、僕は働いてヘトヘトなんだ。 席を譲ろうなんて元気ないんだ。 悪く思わないでくれ。 そう思いながら、僕は目を閉じて一休みすることにした。 そして、降りる駅の少し前で目を開け、ドアが開くと同時に電車を降りる。 駅から十分ほどかけて歩いて、ようやくたどり着いた我が家。 寝ているであろう妻と子供を起こさぬように、静かに玄関を開ける。 真っ暗な闇を想像していたのに、そこにあるのは、電灯が輝く明るい世界。 「おかえり」 笑顔で迎えてくれる妻と子供の顔。 なぜだろう。 それだけなのに、今日の疲れが全て飛んでいった。 「ただいま」
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