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男は急いでいた。
男は忙しく扉に鍵をかけると、荒々しくそれをポケットに突っ込みドタバタと階段を降り下る。
別段、会社に遅れるような事があって急いでいるのではない。単に男の几帳面か性格が、2分遅れて起きたことに、不満と焦燥感を覚えさせていたのである。
そんな性格なものだから、男の妻はついに別居を切り出して、一昨日家を出ていった。また、会社の部下からもその性格のせいでひどく疎まれる存在であったので、日々周りから向けられる冷ややかな視線にストレスを募らせていた。
ラジオ体操の溌剌とした声を横に流しながら、そそくさと地下鉄の駅へ急ぐ。
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