百の剣士を打ち破りしは

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××× 俺こと寺宇時雨(じう しぐれ)は、バリバリの日本人だ。 剣と魔法のファンタジーワールドに暮らしているが、遺伝子レベルで日の丸国家の血を引いている。 四年前のことだ。 当時中学三年生だった俺は学校帰りにトラックにぶっ飛ばされて死に、気が付くと辺り一面何もない真っ白な世界に突っ立っていた。 しばらく呆然としていると、数秒後、目の前に女神を名乗るイタい美女が出現した。 その後のやつと俺の会話を端的にまとめると以下のようになる。 女神「今からあなたには異世界に転世し、魔王と戦ってもらいます」 俺「いや、俺ただの一般人なんだけど。戦えないんだけど」 女神「大丈夫です、私があなたに戦う力を授けましょう。人外レベルの怪力でも、絶対的な防御力でも」 俺「おおっ! じゃあせっかくだし、人並み外れた量の魔力とかくれよ! 一回魔法とか使ってみたかったんだ!」 あの頃の俺は青かった……ネット小説とかでよくある『異世界転世モノ』に憧れて、盗賊やらモンスターやらが跋扈する物騒極まりない世界に二つ返事で来てしまった。 女神のお情けなのか、この世界の言語には不自由しなかったし、転世のあと一日は女神とテレパシーで色々と質問もできたのだが――問題が発生したのは転世後二日目。初の野生モンスターとの戦闘で、俺は魔力の使い方がわからないという非常事態に直面し、質問しようにも女神との通信は切れた後で、それはもう大変な思いをしたものだ。 女神のアフターサービスは肝心な時に役に立たん。それ以来あの女とは顔を合わせることもなかったしな。
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