百の剣士を打ち破りしは

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俺はそう言って、机の上にある開発中の魔法陣に魔力を流し込んだ。 淡い水色の光を放ち、感応紙に刻まれた魔法陣が輝きだす。 そして出現した『映像』に、ミアが呆けたような声を出した。 「おおー……あれ? これ、もしかして……」 魔法陣の上に現れたのは十分の一スケールの少女の立体映像だ。 赤いロングヘアの凛とした見た目の少女で、腰には剣を帯びている。まだまだ色彩は薄いしデフォルメされてはいるが、彼女を知る人間からしてみれば充分誰の姿かわかるはずだ。 その証拠に、そのホログラムを色んな角度から覗き込んでいたミアが歓声を上げた。 「お、お師様! これってもしかしてリッカ・タチバナ様ではありませんか!? あの魔王討伐パーティーの前衛を務めたという剣士の!」 興奮したようにまくしたててくるミアの反応に満足しつつ、俺は頷く。 「ああ、そうだ。巷では『百剣の王』とか呼ばれて調子に乗ってるあのリッカだ」 「お師様凄いです凄いです! こんなに精密な映像ができるなんて聞いたことないですよ!」 きらきらした目で立体映像を凝視しているミアだった。まあ、悪い気はしない。 「つってもこれはまだ未完成だけどな。俺の記憶で補強しないと精度が落ちるし。純粋なイラストを映像化させるにはまだまだ研究が必要だ」 「いらすと? ……あ、お師様は何かを創るのが夢なんでしたっけ。あの、アメみたいな……」 「『アニメ』だバカ弟子。師匠の目的くらいちゃんと覚えとけ」 俺は嘆息した。この弟子は魔法陣に関しては異様な記憶力を発揮するくせにこういうことはすぐに忘れる。 ――アニメを創る。 目下、俺の夢である。 魔王を倒してから俺はとにかくヒマだった。日本と違ってこの世界には娯楽的なコンテンツが少なすぎる。地球人時代はもっぱらオタク趣味を有していた俺からすればこの世界の人間はどうやって時間を潰しているのか理解できない。 なので、俺はこの世界で培った魔法陣の知識を活かして創ることにしたのだ。 二次元的娯楽コンテンツの極致、アニメを。 ヒマだったし。あと、魔王討伐の旅を映像化すれば売れるんじゃないかなーみたいな下心もある。
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