1768人が本棚に入れています
本棚に追加
部屋の片隅に走っていって魔法陣に喋りかける俺に、ミアが不思議そうな目を向けている。
しかし今はそれどころじゃない。
「残念ながら今は忙しいからさっさと帰れ。つーか何しに来たんだ? 遊んでほしいのか? ヒマな奴だな」
「ぶち殺すわよ。……いいから、話くらい聞きなさい。そしたら悪いようにはしないから」
「お前が言葉を濁す時は厄介ごとを隠している時と決まっている。悪いが追い払わせてもらうぞ! フハハハハ、警備用ゴーレムの性能実験の的にしてくれる! 行け、『自宅警備兵』! その女と遊んでやれ!」
『ああもう、あんたは!』
ゴゴゴゴゴ……と何か巨大なものが動き出すような音がして、プツッとインターホンの映像が消える。
俺は一仕事終えた気分でふりかえり、
「じゃあミア、話の続きをするか」
「何ですか今の! あんなお師様初めて見たんですが!」
「気にするな。ちょっとした心温まるコミュニケーションだ」
「警備用ゴーレムの性能実験とか言ってませんでした!?」
そんなことを言いあっていると、いきなり俺たちのいた部屋の壁が爆ぜた。
ガラガラとついさっきまで壁だった瓦礫が落ち、隅に立てかけてあった実験用具が粉々に砕け散る。俺とミアは絶句。
「ったく、普通あんな大きいゴーレムをけしかけてくる? 私じゃなかったら大惨事よあれ」
壁に空いた大穴から、一人の少女が悠々と入ってきた。
深紅の髪を腰まで伸ばし、勝気な瞳は今は呆れたように細められている。
そして、少女の手には物騒な光を放つ一本の剣。
「あ……あっ!」
ミアが作業台の上の立体映像と、侵入者との間に何度も視線を往復させている。
まあそういうリアクションにもなるよな。ほとんど同じ見た目だし。
「……で、何しに来たんだよ、リッカ」
俺は久々に再会した昔のパーティメンバーに、諦めたような挨拶をした。
最初のコメントを投稿しよう!