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「誘拐なんかするわけねーだろ。あいつはアレだ。成り行きで拾っただけだ」
「拾ったって、そんな簡単に言われても。犬じゃないんだし」
「俺にとっちゃ似たようなもんだ」
リッカの表現は案外的を射ている。
俺が肩をすくめつつ本心から肯定すると、横合いから不満げな声が聞こえてきた。
「……お師様、私のことをペットだと思ってたんですか」
見れば、ミアがちょうどティーセットを持って台所から戻ってきたところだった。
リッカがやや慌てた様子で、
「えっと……ミアちゃん? さっきのは言葉のアヤっていうか、シグレにも悪気があって言ってたわけじゃ――」
「納得いきませんお師様! ペット扱いするならちゃんと可愛がってください! 遊んでください! お散歩に連れて行ってください!」
「別に嫌がってるわけじゃないのね」
「そうかそうか。だったらちゃんと犬っぽく鳴いてみろ」
「わんわんっ! わふー」
「……シグレ、この子少し変わってるわね」
「だろ?」
ペット扱いを進んで受けたがるあたり、こいつは常人離れした感性の持ち主だと言えるだろう。
「まあ冗談はともかくとして、そこの銀髪ロリは俺の弟子だ。なんか魔法陣に興味があるらしくてな。色々俺のとこで勉強したいんだと」
話を戻す。これはまあ本当のことだ。
「魔法陣に興味があるの?」
「はい。お師様のお役に立ちたいのです」
「あら、随分懐かれてるのね」
「まあ色々あったからな。ヒントは『奴隷商人』と『人身売買』」
「奴隷商人? 人身売買? ……って、まさか」
「ご名答。この間お前が依頼してきた一件の副産物だよ」
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