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×××
「おいリッカ、場所は本当にここで合ってんのか?」
俺は手に持った通信用の魔法陣を刻んだ一枚の紙――感応紙に向かって問いかけた。
数秒のラグのあと、魔法陣を介して遠隔から返事が届いた。
『間違いないわ。きちんと裏もとってある。連中は間違いなくそのあたりに潜伏してるわ』
「そのあたり、ってお前……」
俺はぐるりと周囲を見渡し、
「いくら何でもアバウトすぎだろ。ここ山の中だぞ?」
台詞の通り、俺の現在地は王国東の山の中。
俺はとある事件の収拾を依頼されてここに来たわけだが、肝心の探し相手が見つからない。しばらくぶりの外出ということもあって、俺の足腰はすでに悲鳴を上げている。
やむを得ず依頼人に連絡してみたわけだが、どうやら向こうもそこまで詳細な情報は持っていないようだった。
『まあまあ。ちゃんと依頼をこなしてくれたら、国王にかけあって例のものを仕入れてあげるから。あんたの研究に必要な、マンドラゴラの種をありったけ』
「……約束だぞ、マジで」
俺は嘆息した。まあ、この依頼は俺から出した交換条件の上に成り立っている。今更この件を放り出すわけにはいかない。
……仕方ない。これ以上足で探すのも面倒だし、あれ使うか。
俺は二回目のため息を吐いて懐から感応紙を取り出した。
「【生体感知】」
感応紙に刻まれた魔法陣が発動する。
この魔法陣の効果は、『一定範囲内にいる生物の場所を特定する』こと。とはいえ虫のような自我の薄いものではなく、ある程度の魔力を保有する生物ーー主に人間をサーチする。
しばらく目を閉じていると、瞼の裏側で『サーチ』に引っかかった生物どもの分布図が表示された。俺はにやりと笑ってその分布図を暗記する。
「――見っけ」
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