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俺は懐から新たな感応紙を取り出しーー
「てめーらこんなわからにくい所にアジト作ってんじゃねーよ! 何時間探したと思ってんだァァァァァァ!」
「「ぎゃああああっ!?」」
発動したのは、電磁波を生み出して敵をマヒさせる既成魔法陣【パラライズ】。それをまともに浴びた見張りの二人はもんどりうって地面に転がり、びくんびくんと痙攣した。その様子を見て俺はフンと鼻を鳴らす。
――盗賊団・デリンジャー。
人身売買を主に生業とするならず者たちの集団だ。知名度もそれなりに高く、街の衛兵詰所に行けば賞金首として張り紙にその名を連ねている。
で、その『デリンジャー』の討伐こそ、今回俺が受けた依頼の内容である。
さーて賊を一掃するかと息巻いて洞窟に入って行こうとする俺の足元で、ノッポの方がかすかに口を開いた。
「お、お前、何者……?」
「んー……」
俺は少し考えて、にっこりと笑った。
「元英雄☆」
「は? ……ぎゃあああああああ!」
いい笑顔のままもう一発同じ魔法をぶち込んで今度こそ意識を刈り取る。
さて、次は中だ。
俺は特に気負うこともなく洞窟に入りーー
「【パラライズ】!」
「うわぎゃっ!」
――その十五分後に悪しき盗賊団は壊滅した。
「終わったぞ」
『あら、早かったわね』
俺はついさっき俺の放った【パラライズ】の魔法で体の自由が利かなくなった盗賊団のボスを椅子代わりに、通信用の魔法陣で依頼人の女と話していた。
盗賊団・デリンジャーはそこそこの規模を持つ人身売買専門の組織だ。アジトは洞窟をさらに掘り進んで拡張されており、中にいた構成員たちの数はボスを含めて三十人あまり。その全員がぶっ倒れてびくんびくんと痙攣している現在の絵面は客観的に見てもかなりアレだった。
『とりあえず、あんたはそのまま離脱してくれていいわ。すぐに兵士を向かわせるから』
「見張りは?」
『どうせいらないでしょ? まさか天下の【法陣士】様が、十五分やそこらでせっかく捕まえた賊に逃げられるような下手は打たないだろうし』
信用されているんだかからかわれているんだか。何となく後者な気がする。
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