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俺は深々とため息を吐き、作業を中断して部屋の入り口の方を向く。
「何だ、ミア。今日は何を破壊したんだ? 花瓶? それとも皿か? もう今更滅多なことで怒ったりしないから、大人しく白状しろ」
俺はここ最近、毎日のように破壊音を聞いている。食器、雑貨、果ては部屋の壁に至るまで。あらゆるものを壊され続けた俺に今さら恐れるものなど何もない。
俺の余裕たっぷりな言葉に、少女は安心したように後ろ手に隠していたソレを掲げーー
「その……お師匠様が育てていたマンドラゴラの鉢植えをひっくり返してしまって」
「ああああああああああああああ!」
「ひうっ!?」
ーー突如絶叫した俺にびびって後ずさった。
俺は怯える少女の腕から陶器製の鉢植えの破片を奪い取り、急いで状態を確認する。
マンドラゴラは高価な魔法道具を作るのに使用する植物だ。市販品を買うと高いので鉢植えを入手し、俺が大切に育てていた。
しかし一抱えほどある鉢植えは盛大に破損していて、そこから土がこぼれている。
いや、百歩譲って土はいい。問題は……
「……おい弟子」
「は、はいっ」
「ここに植えてあったはずのマンドラゴラ本体はどこに行った? なんで土しか入ってないんだよ」
「……素直に言ったら怒りませんか?」
「ああ。もちろんだ。可愛い弟子を怒ったりするはずないだろう?」
びくびくしながら上目遣いで聞いてくる弟子に、俺は慈愛に満ちた表情で言った。
実際のところ、この少女は見た目に限ればかなりの上玉だ。
透き通るような白い肌に、やたらと目立つ銀色のロングヘア。
瞳は輝く青色で、目鼻立ちも極めて整っていると言っていい。
まあロリだけどな。十二歳のお子様だ。いかに将来性があろうとも、十八の俺からすれば恋愛対象にはなりえない。犬みたいなもんだ。
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