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さて、俺の慈愛に満ちた表情を見て目の前の弟子ーーミアは胸をなでおろす。
「さすがお師匠様。懐が深いです。あ、マンドラゴラは私が鉢植えを蹴っ飛ばしちゃったときに地面に吹っ飛んで、しばらくよちよち歩いてたんですけど、見ているうちに倒れて動かなくなっちゃいました。まだ成熟してないうちに外に出たから、外気に耐えられなかったんでしょうね……」
しみじみと語る弟子。
俺は無言でミアのこめかみを掴んで締め上げた。
「あれ? お師様どうしーーみぎゃああああああー! 痛い痛い! ごめんなさいごめんなさい! 許してください! っていうか素直に言ったら怒らないって言ったじゃないですかぁ!」
「怒るに決まってんだろこのバカ弟子があああ! つーかお前さっき何て言った? 市場じゃ十万メリルは下らない魔法植物が目の前で枯れていく様をただ見てたっつったか!? あれはお前の数倍価値がある代物なんだぞ! おら『マンドラゴラさんはすごい』って三回言ってみろ!」
「マンドラゴラさんはすごい! マンドラゴラさんはすごい! マンドラゴラさんはすごいっ!」
「うるせえ! 黙って反省しろ!」
「ええええ!?」
目を丸くしている弟子をアイアンクローから解放してやると、ミアはふらふらとよろけて、転ぶ一歩手前で踏みとどまる。
俺は涙目になっている弟子を放置してその場にしゃがみこむ。
「ったく、このバカ弟子が……」
「うう、すみませんすみません……」
俺は床についた取っ手をつかみ、べりっと上に持ち上げる。
するとそこには――おびただしい数の魔法植物の鉢植え。
「マンドラゴラの大半をここに避難させといて正解だったな」
床下を改造して作った、人間二人くらいなら簡単に入れるであろう収納スペースには、ところせましとマンドラゴラの鉢植えが並んでいた。
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