第1章

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「なんてはた迷惑なトイレなんだ。ひょっとしてこの水風船、その事実に気づいて下のトイレにいる奴を脅かしていただけか?その様子を楽しむために時限装置も必要だったってことだな」  真面目な芳樹が勝手に実験をした奴の心理を考えて怒る。しかしそう考えないと水風船も煙草の不要の物となってしまうのだから仕方ない。 「これはまた学園長に報告だな。俺ってもうここの教員じゃないのに」  林田は学園長に会いたくないのか、ゴム手袋を外すことを忘れてもさもさの天然パーマを掻き毟る。おかげで髪がさらにもさもさと広がった。 「先生。また松崎先生に褒められるじゃないですか。よかったですね」  莉音が嫌味たっぷりな笑顔でそう言うと、急に林田は背筋を伸ばした。前回の急接近が学園長に会った後だっただけに、同じことがあるかもと期待しているのだろう。  それにどうやら莉音が林田に対して酷い対応をしていたのは、この恋愛問題が関係していたようだ。林田は莉音が恋しているとは知らず、成功した自分の体験を語ってしまったに違いない。まだ進展していない莉音としてはむかつく態度だったのだろう。だから嫌がらせを連発していたということだ。 「それにしても、また七不思議が違う方向に」  解決したものの、桜太はまったく新入生の興味を引けないではないかと悩んでしまっていた。
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