第1章

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 さて、林田によって片付けられたトイレに戻ってきた科学部一行は、真面目に音が発生する原因を探し始めた。 「何故妙な音がするか?これはもう排水管のせいと考えて問題ないよな」  真面目に検証を始めようと切り出した桜太だったが 「ちょっと待った」  そこに林田が割って入ってきた。マスクは取ったもののまだ白衣を着たままである。 「何ですか?」  余計なことはするなよと思いつつも桜太は訊く。 「このゴム。これなんだけどさ」  ゴム手袋をしたままの林田は、トイレに散らばっていたゴム製品を入れた袋を持ち上げた。 「それはもういいですよ」  もうその話題は要らないと千晴は林田を睨む。本当に男子というヤツはこういう話題が大好きだなと思ってしまう。 「そうじゃなくてさ。これ、アレではないみたいだよ」 「えっ」  林田の指摘に、完全にアレだと思い込んでいたメンバーは呆気に取られる。どこをどう見てもアレだと思えたのに違うとはどういうことだろうか。そもそもトイレに散らばっていたゴム製品というだけでアレだと決めつけてしまう。しかも色もそれっぽいし使用済み感満点だった。 「俺もそれだと思い込んで片付けるのは不衛生で嫌だなと思ったんだけどさ、よく見るとこれって水風船なんだよね」  林田はそう言って一つ摘み上げた。 「あっ」 「たしかに」  まじまじと見つめてそう感想を述べたのは千晴を除く男子一同だ。柄がないせいで解り難かったが、間違いなく屋台のヨーヨー釣りに使われている水風船のゴムである。それにしても紛らわしい色の物があったものだ。 「これは誰かが実験していただけかもね。煙草も不良の仕業ではなく実験に用いただけかも」  真っ先に不良説を唱えていた林田がそんなことを言い出す。何だか勘違いに次ぐ勘違いがあっただけらしい。
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