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「煙草を実験に使うとなると、時限装置かな。紐を焼き切るタイミングを計るのに意外と役立つんだよな。そうするとこの水風船に紐が縛りつけてあって、煙草の火で切れると落下するという仕組みかな」
煙草と水風船からこれだけの推理を組み立てたのは優我だ。しかもあり得そうで怖い話である。
「なるほどな。そうすると、風船の口は紐で縛ってあるだけだったんだ。だから割れずにゴムはそのまま残っていた。割れていたら誰でも水風船だと解るが、色や形状からそのままだと俺たちみたいに勘違いしてくれるってわけだ」
優我の推理を補強してしまったのは迅だ。しかしこれは見過ごせない事実かもしれない。実験が行われていたということは、このトイレにはやはり秘密があるのだ。
「まずは排水管が本当に他に流れずに繋がってしまっているか検証しよう。楓翔、この間使っていた浮って今日も持っているか?」
実験したのが科学部員でないというところが不思議なところだが、桜太は本題に戻った。そして楓翔を見る。
「あるけどさ。トイレに流すのか」
嫌々ながらも楓翔はズボンのポケットから浮を取り出した。トイレに流されるともう二度と使えない感じがあるが、実験のためだから仕方ない。
「後は針金かてぐすがあるといいんだけどな。細くて途中で切れないものがいい。万が一排水管の途中で止まったら困るしさ」
桜太は水が溢れているのが排水管の詰まりのせいだった場合も考慮して言う。ここで科学部が壊してしまっては意味がない。怒られて話題になったとあっては、新入生は入ってくれないだろう。
「そうだな。あらゆる可能性は考慮しておく必要がある。俺が取ってこよう」
亜塔がそう言って走って行った。こういう行動力が人一倍のが亜塔のいいところだ。本当に好きなものが独特でなければ尊敬できるのにとも思ってしまう。
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