第1章

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「ついでに水漏れが本当に起こっているのか解るといいだけどな」  繋がっているだけでは水が溢れた理由にしかならないだろうと優我が首を捻る。 「思えば溢れ出た水の量はそれほど多くなかったもんな。まあ水圧で上がってくる分を考慮しなければいけないが、排水管の中にそれほど溜まるとも思えないし。音が鳴っているのは途中で外れているからかもしれない」  莉音が多角的に検証し始めた。たしかにトイレの一回の水の使用量が10リットルだった場合、溢れ出てくる水の量も相当数になるはずだ。しかも何度も流しているのである。床に広がっただけでは済まないのではと思えた。 「音が鳴るのは水が隙間を通る音と、押し出されたことによって空気が流れ出たことだというわけですね。なるほど」  楓翔が勝手に納得してしまっている。これでは検証は要らないのではとも思える推理だ。 「おおい。針金はなかったがはんだがあったぞ。これでもまあ大丈夫だろう」  そこへ亜塔がはんだの巻き束を持って帰ってきた。なんとか検証にはこぎつけたことになる。 「推理が成り立つためにも繋がっていると解らないとな。はんだは柔らかいものの、熱を加えない限り切れないし」  桜太ははんだを受け取ると浮に巻き付けていった。これだけでは不安かと思えたが、亜塔がついでにガムテープも持ってきてくれていたので、それで固定する。こういうところは頼れる元部長だった。 「水がまた溢れるはずだから、雑巾を敷き詰めておこう」  準備が進むのを見た林田がそう言って使用不能のトイレにあった雑巾を床に広げていく。ゴム手袋をしたままだったのでこの作業がすぐに出来たのだ。いつの間にか林田もしっかり科学部の検証を楽しんでいる。しかも監督する立場だと忘れたような働きっぷりだ。
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