第1章

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「本当に繋がってたとはな。はんだは切れてないか?」  可能性としては面白いと推理していた莉音だが、出てきた浮に呆れていた。切れていないかは桜太と楓翔が引っ張り合うことで確かめる。ちゃんとお互いの力が伝わり、下の管で繋がっていることが解った。 「切れてないですね。ちゃんと繋がっています。これは本当に他に排水する場所がない感じですね」  証明出来てこれほど悲しい事実があるだろうか。桜太は言いつつも校舎が大丈夫か不安になってくる。どっかの国の建物みたいに、地震が来たら壁から空き缶が出てくるかもしれない。もしくは鉄骨ではなく竹が入っているかもしれないなとも思ってしまう。これは明らかな手抜き工事だ。 「溶接ミスかな。他の階のトイレは問題ないし、まあいいか。今の検証の最中に音はしていたか?」  亜塔は大問題を棚上げして訊いた。目の前の興味が優先という、科学部の鏡のような態度である。さすがは部長を務めていただけのことはある。 「音に気を払ってなかったな。これを引っこ抜いて音の検証に移ろう」  あっさりと亜塔の話に乗ったのは優我だ。しかし誰もがこの優我の意見に同意してしまう。 「じゃあ、はんだを切って抜き取ったほうがいいな。まだ巻き束に余裕があるし」  桜太も手抜き工事は忘れることにした。それを考えるのは生徒ではなく学校を管理している先生たちだ。はんだを切る物を探したが、亜塔はガムテープは持ってきたくせにニッパーは持ってきていなかった。こういうところも亜塔らしい。 「これで切れるんじゃない?」  困っている桜太に、千晴がライターを差し出した。よく百均などで売られている安価なやつだ。 「どこから持ってきたんだ?それにこれで切れるのか?」  受け取りつつも桜太は困惑してしまう。
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