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「なんだ、今年も1人なのかよ、鈴」
夜空いっぱいの光の華々と破裂音。
それに混じって聞こえてきた声に振り向くと、いつの間にかすぐ横に、幼馴染の爽太が座っていた。
隅田公園のジャングルジムのてっぺん。
幼い頃からの私達の特等席だ。
今年も帰って来たんだーーーー
「おかえり…」
言葉に力が入らない。
今年こそ花火大会までには彼氏を作るぞ、と自分でも意気込んでいたのに。
結構いい感じなとこまでは行ってた気がしたが、また直前でダメになった。
ダメにした、と言うべきか。
それもこれもこいつの所為だ。
幼い頃から当たり前の様に一緒だった私達は、3年前の高2の夏、付き合い始めた。
ちょうどこの花火大会の日からだ。
けれど結局恋人同士として2人で花火を見たのはそれが最後で。
もう離れて3度目の夏、私は彼以上に好きな人を見つけられていない。
けれどそれを口にすれば、彼を縛ることになる。
「おじさん、おばさんのとこには行ったの?」
気持ちに蓋をするように、違う話題を振った。
「んー…いや、花火見たらすぐ戻るし」
いつもこんな感じだ。地元に帰って来たら、普通は真っ先に実家に行かないだろうか。
「お盆休みは?」
「んー、わかんね」
次々打ち上がる花火を見上げながら、面倒くさそうに答える。
「俺はただ、『次の彼氏が見つかるまで一緒に花火見てやる』って約束果たしに来ただけだし」
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