第1章 陣痛

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半年が経った。 経過は順調だった。 祥子は体内で活発に動き回る胎児が 愛おしく、産まれてくる日が楽しみだった。 だが、その頃には既に耀達はこの地にいない かもしれない。知る人のいないこの土地での 生活に耀達は安心を与えてくれた。僧侶と しての気遣いや、何気ない高校時代の思い出 話に励まされ、慰められもした。だが、 『もし、将来オレが子どもに会いたいって 言ったら、会わせてくれる?』 いつか一度だけ彼が言った言葉が祥子の胸に
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