第1章 陣痛

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人気のない分娩室前の廊下に時計の針が進む 音だけが響く。もう何時間こうしている だろう。祥子を病院に連れてきたのは宵の口 だった。美奈子が壁の時計を見上げると既に 日付が変わっていた。その時、産声が 聞こえてきた。 看護師が廊下に現れた。 「吉川さん、産まれましたよ。男の子です。」 「祥子は?」 「お母さんも無事ですよ。お会いに なりますか。」 「いいえ、疲れているでしょうから、明日 また来ます。」
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