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いつまでもめそめそしていられない。
落ち着いたら、夫の葬式を行おう。
骨がなくたって、魂は必ず帰ってきている筈なんだから。
きちんと供養してあげないと可哀想だもんね。
私は親戚一同に、夫の死を伝える為、手紙を書いた。
葬儀の日取りや、坊さんの手配など忙しくなる。
そんな準備をしていた時。
ガラガラと音が聞こえた。
玄関の引き戸が開いた音だ。
こんな夜中に誰だろう?
お隣さんが心配してきてくれたのかな?
なんて思いながら、玄関に向かう。
そこで私が見たものは……。
「あの……
どなたですか?」
分からなかった。
周りが薄暗く、玄関に立っている人の顔がよく見えない。
私が尋ねると、その人影は応える。
「俺の顔を忘れちまったのか?」
「え?」
「いやー、参ったぜ
まさか初戦で頭を殴られて気絶
そのまま一時的な記憶喪失に陥るとはな
お陰で、10年間捕虜にされてたよ」
…………。
私は思わず口を覆った。
また、目から涙が溢れてくる。
でも今度の涙は、さっきのとは質が違った。
「あなた……なの?」
「他に誰が居るんだ?」
人影が近付き、その顔が露わになる。
そこには、私がずっと見たかった顔が笑っていた。
夫は言った。
「ただいま」
私は夫の胸に抱きつく。
「おかえり!」
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