第1章

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(妻視点) 夫が徴兵され、あれから何年の月日が経っただろう。 1939年から1945年までの6年間。 長い長い戦争は、日本の敗戦を以て終戦となった。 戦地に派遣された兵士達は、一斉に帰還。 帰るべき場所に帰って行った。 帰ってきたソレが、 生身なのか…… はたまた 魂なのか……。 そこは別問題だったけれど、とにかく戦争が原因で離れ離れになっていた人達は皆一緒になることができた。 ただ……。 私の夫は、いつまで経っても帰って来なかった。 季節が過ぎ去り。 子ども達も自立し。 日本が活気を取り戻しつつある時も。 夫は一向に帰って来なかった。 あの人、どこか抜けたところがあるから、戦争が終わった事に気付いていないのかも知れない。 きっと、どこかに隠れているんだ。 虫も殺せない臆病者なんだから……。 きっと……。 きっと……。 どこかで、生きてる筈……。 そう信じたかった。 しかし。 まもなくして、夫の戦死が私に伝えられた。 …………。 夫が死んだ? それを理解した途端、私は膝から崩れ落ちた。 まるで、吊り上げられている糸が切れた操り人形の様に、その場に崩れ落ちる。 その日、涙が涸れるほど泣いた。 あんなに優しかった夫が……。 必ず帰ると約束したのに……。 嘘つき……。 馬鹿……!! 戦争の馬鹿!! あの人の馬鹿!! 信じた私の馬鹿……。
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