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「ぐうぅ! 銃の戦いはつまらん。飛び道具は放棄しようや」
ブエルムは左腕の出血を抑えるために、口でチェーンを更にきつく巻いた。
その時、多数のB級奴隷の戦闘員を引き連れてシュレムが姿を現した。バカ、何でここまでノコノコとやってきたんだ。真剣勝負に集中できない。
「オカダ君、大丈夫? まだ生きているの? 怪我はない?」
ランドルトから凶悪なブエルムと戦っていると知ったシュレムは、いても立ってもいられなくなり危険を顧みずに僕を探しにきたのだ。
「まだ決着はついてないんだ。俺の気遣いを無駄にしないでくれ」
ブエルムは僕の動揺を見逃しはしなかった。看護師姿のシュレムを見るとニヤリと笑い、全力で白衣に掴みかかろうと走り出した。
スケさんが、すかさず注意を逸らすために再び右腕のチェーンの先に取り付く。だがトラックと軽自動車並みの体重差は、いかんともしがたく仔犬のように引きずられ、やがて振り落とされた。
シュレム側の数十人に至る、冴えない男達が呻いた。
「あれは……ブエルム! やばすぎるぜ」
「わわ! こっちに向かってくるぞ!」
B級奴隷の中年の戦闘員、作業労働者、その辺に歩いてそうな汚い服のオッサン達が何だか一致団結している。ブエルムの野獣めいた形相を目の当たりにして、三分の一は命からがら逃げ出したが。
「オカダ査察官、死ぬ気で助太刀いたす! 我らの無鉄砲な度胸を忘れず後世に伝えてください」
「奴隷解放万歳! 革命成功万歳!」
男達がブエルムに投石しながら、棍棒や槍で戦いを挑んだ。あっという間にチェーンで次々となぎ倒されてゆく。僕はマスターキラーの耳に届くように叫んだ。
「ブエルム! 貴様は男のくせにデュアン側に味方するか。奴隷解放革命に盾突くのか!」
「うるせえ! 一対一の戦いを拒否したな! 皆殺しにしてやる」
「ならば最強のコンタクト・ドライバーの力を見せてやる」
髪を振り乱したブエルムは狂ったように走り抜け、口角から泡を吹きながらシュレムにチェーンで襲いかかる。
「スタリオン! Come here!」
路地裏から障害物を蹴散らして、無人のスタリオン高機動車が躍り出た。凄まじいスピードでステアリングを切り、砂煙を浴びせる姿は突進してくる犀のようである。真正面からブエルムを捉えると、その武骨なバンパーで巨体を弾き飛ばした。
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