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「しかし、大学になってもこうやってキチンと掃除までしやがって、迎え盆の準備までするとは、孫太郎もやんちゃが足りねえなァ?」
家の中に入り、どっかりあぐらをかきながらそんなことをのたまる爺さん。
脇の少女がどこかジト目だった。
「またそんなこと言っちゃって。貴方、孫太郎が準備してくれなければオイオイ泣くでしょうに」
「う、そ、ソレは言わねえ約束だぜ婆さんよ」
ゴッ、と音がしてジジイの顎にアッパーカットが入っていた。
爺さん、悶絶。
少女―――こんな年に見えながら―――紛れもなく俺の婆さん―――は、ニッコリ笑いながら、
「孫太郎は、冬子さんと呼んでくれますよね?」
そんな笑顔。
当然逆らえるハズもない。
俺はポリポリ頭を掻きながら、
「…でも冬子さん俺の婆ちゃんだし」
「まあ、それはそうなのだけれど」
でも、お婆ちゃんらしいことは何一つしてないから、と―――俺の婆さんは、半透明の自分の身体を見て、ちょっと後ろめたそうに微笑んだ。
そう。
―――ここにいる、俺の爺さん。
そして婆さんは、
オバケである。
オバケといっても怖いモノでも何でもなく、単にご先祖様という奴で、お盆だから帰って来た。
それだけのコトである。
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