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弁当をぼそぼそと口に運んでいると、テレビはいつの間にか、情報番組に変わっていた。
「さて、次の話題です。今、しゃべる家電がキテいます。」
俺はぼんやりと、その番組を見ていた。しゃべる家電?
部屋に入れば、人感センサーで自然に点き「おかえりなさい」としゃべる電球ロボット。
「お疲れ様。今日はどうだった?」と話しかけてくれる自走掃除機。
話し相手になってくれるスマホ。今の旬の素材を教えてくれたり、中身を管理してくれる冷蔵庫。
温めたお弁当の情報をQRコードから読み取り、栄養のバランスを音声で教えてくれる電子レンジ。
何もかもしゃべる時代か。
これって、まるで。
「家族じゃないか。」
俺は一人、声に出していた。俺はその次のボーナスで、家電一式を買い換えた。
「おかえり。」
玄関のドアを開けると、やさしげな女性の声が俺に話しかけて、玄関が明るくなった。
もう手探りで、暗い中スイッチをまさぐらなくて済む。
「ただいま。」
自分でも気持ち悪いとは思ったけれど、俺はそう一人答える。
自走掃除機がすぐさま、俺に駆け寄ってくる。
「お疲れ様。今日はどうだった?」
「ああ、今日は仕事がきつかったよ。本当に人使いの荒い会社だよまったく。」
そう言いながら、俺は買ってきたコンビニ弁当を電子レンジに放り込む。
「このお弁当のカロリーは512キロカロリーです。栄養のバランスは、少し緑黄色野菜が足りないようです。」
「そうなんだよな。どうしてもお弁当だと野菜は足りてないよな。次はサラダでも一緒に買うかな。」
温めた弁当を手に、俺はテーブルの上のテレビのリモコンのスイッチを入れる。
「あなたへのオススメ番組は、このラインナップとなっています。」
テレビから音声が流れる。
このテレビは、俺が見ている番組から自動的に学習し、オススメ番組を音声で知らせてくれるテレビなのだ。
俺の好みの番組ばかりだ。
「なあ、この子、どう思う?」
俺が話しかけると、
「かわいくて魅力的な女性だと思います。」
とスマホが答えた。
「だろ~?めっちゃかわいいよな、この子。すごくタイプ。」
立派に会話が成立している。俺は一人ぼっちではなくなった。俺に家族ができたのだ。
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