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外に出ると少し冷たい風に包まれる
「少し町歩かない?」
「いいけど…」
ライルは私の顔色を確認するようにジッと見る
「無理はしないから」
「それなら少しだけな」
夜から賑わうこの町はまだ少し静かで手をつないで歩く
機械屋のショーケースに並ぶ家電は新しい物ばかり
私が家で長年使っている物の比較すると時代を感じる
「今はこんなことも出来るんだ…」
冷蔵庫を見ながら宣伝用に張られているポップには驚く機能がたくさん書かれている
「ルリの家のは大分使い込んでる感じだな」
「私が気づいた頃からあったから、いつ変えたのか分からないの」
私が唯一分かるのはライルからもらったカメラだけ
壊れる前に変える方が良いのだろうが…
セゼーヌさんが愛用していた物だと思うと、手放せない
「長く使えるように点検しないとな」
「ライル詳しいの?」
「家業だから多少知識はあるよ」
聞けば納得だが、機械に詳しいなんて初めて知った
「まだまだ知らないことがあるなぁ…」
私の呟きにライルはちょっと勝ち誇ったように笑う
「ルリにならいくらでも教えるけど?」
「そ、そろそろ帰ろうか」
恥ずかしくなってつい視線を反らす
日が沈み始め、賑わう前に私たちはメトロの町を去った
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