奇跡の時間

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 父の葬儀から1カ月後。  仕事から帰ると嬉しいニュースが舞い込んでくる。  それは何かと言うと、新しい命を授かったのだ。  私は笑顔で真理子のお腹を触る。 「元気に産まれて来いよ。それが一番の親孝行だ……あっ、父さんに報告しないと……」  不意に思い出して声に出すと、美優が横から話し掛けて来た。 「おじいちゃんなら、さっきまでそこにいたよ」 「えっ!?」  美優が指差す先を見るが、勿論誰もいない。 「……おじいちゃん、どんな顔してた?」 「うーんとね……笑ってたよ! とっても嬉しそうだった!」 「そうか……」  四十九日までは故人がこの世に留まっていると聞いた事がある。  父が様子を見に来たのだろうか?  まだ近くにいる気がした私は、暗い外へと飛び出した。  すると見覚えのある怪しい老婆の姿が視界に映る。 「どうやら気に入って貰えたようだね」 「福与さん……良かった、会いたかったんです。夢じゃないかって思う事もありましたが、あなたを見て確信しました。奇跡を……有難うございます」 「私はお代が貰えればそれで結構。お礼の言葉なんていらないよ。さて、いくらにしようかね。この前の客には一億払って貰ったけど……」 「一億!?」  驚きのあまり思わず叫んでしまった。 「ふふふっ……前の客は金持ちだったからね。心配いらないよ。あんたみたいな貧乏そうな奴にそんな請求はしないさ。……十万円、それでいいよ」 「ビックリした……はい、十万までならいつでも払える様に財布へ入れておきました。どうぞ、受け取ってください」  私はポケットから財布を取り出し、福与へと現金を手渡した。 「まいど。……最後に一つだけ聞かせておくれ。この薬の事を他の誰かに話したかい?」 「話してませんよ。おかしい人に思われるから、この事は黙っていろと父に言われました。……秘密にして墓場まで持って行きます」 「それがいい……」  そして老婆は消える様に去って行った。
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