25人が本棚に入れています
本棚に追加
父の葬儀から1カ月後。
仕事から帰ると嬉しいニュースが舞い込んでくる。
それは何かと言うと、新しい命を授かったのだ。
私は笑顔で真理子のお腹を触る。
「元気に産まれて来いよ。それが一番の親孝行だ……あっ、父さんに報告しないと……」
不意に思い出して声に出すと、美優が横から話し掛けて来た。
「おじいちゃんなら、さっきまでそこにいたよ」
「えっ!?」
美優が指差す先を見るが、勿論誰もいない。
「……おじいちゃん、どんな顔してた?」
「うーんとね……笑ってたよ! とっても嬉しそうだった!」
「そうか……」
四十九日までは故人がこの世に留まっていると聞いた事がある。
父が様子を見に来たのだろうか?
まだ近くにいる気がした私は、暗い外へと飛び出した。
すると見覚えのある怪しい老婆の姿が視界に映る。
「どうやら気に入って貰えたようだね」
「福与さん……良かった、会いたかったんです。夢じゃないかって思う事もありましたが、あなたを見て確信しました。奇跡を……有難うございます」
「私はお代が貰えればそれで結構。お礼の言葉なんていらないよ。さて、いくらにしようかね。この前の客には一億払って貰ったけど……」
「一億!?」
驚きのあまり思わず叫んでしまった。
「ふふふっ……前の客は金持ちだったからね。心配いらないよ。あんたみたいな貧乏そうな奴にそんな請求はしないさ。……十万円、それでいいよ」
「ビックリした……はい、十万までならいつでも払える様に財布へ入れておきました。どうぞ、受け取ってください」
私はポケットから財布を取り出し、福与へと現金を手渡した。
「まいど。……最後に一つだけ聞かせておくれ。この薬の事を他の誰かに話したかい?」
「話してませんよ。おかしい人に思われるから、この事は黙っていろと父に言われました。……秘密にして墓場まで持って行きます」
「それがいい……」
そして老婆は消える様に去って行った。
最初のコメントを投稿しよう!