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結婚式が終わり、三ヵ月後。
仕事を終えて帰宅する途中、兄から着信が入った。
内容は父が危篤という事。
私はすぐに家へ帰り、真理子と美優を連れて実家に車を走らせた。
「父さん!?」
実家に着くなり父が横たわるベッドへと走る。
ベッドの横には目を赤くした母と姉が座っていた。
「父さん……俺だよ、真司だよ……」
父はミイラの様に痩せ細り、息を荒げて視点も定まらずに目を見開いている。
私が来た事も理解出来ないほど衰弱している様だ。
「母さん、兄ちゃんは?」
「別の部屋で休んでるわ」
「そっか……それで父さんは……」
父の詳しい容体を問い掛けたが、辛そうに俯く母の代わりに姉が答えた。
「もうどうにもならないから、自宅療養してるって話は聞いたよね? それで一昨日から何も食べられなかったらしいの。手の施しようがないのよ……後は私達が看取るだけ……」
信じられなかった。いや、信じたくなかった。
確かに話は聞いていたが、先週までは電話を掛ければ普通に会話出来たし、何だかんだ言っても父が死ぬはずない……頭の片隅ではそう思っていたのだ。
「お義父さん……うっ……うっ……」
真理子が父の手を握り、涙を流している。
短い間だったが、父は真理子の事を本当の娘の様に可愛がっていた。私とは違って結婚式以来まともに話をしていない為、伝えたい事が一杯あるのだろう。
その横では理解の出来ない二歳の美優が、遊んで欲しそうに真理子の服を引っ張っている。
「美優、ちょっと散歩に行こう」
真理子が父と落ち着いて話が出来る様に、俺は美優を連れて外に出た。
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