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美優の手を引き、頭の整理をしながら人気の無い道を歩く。
すると後ろから、フードを被った老人に声を掛けられた。
「あんた、後悔してるね?」
「あっ、急いでいるので……ほら行くぞ、美優!」
見るからに怪しい。
月明りに照らされたその人は、まるで童話に出て来る魔女の様な格好の老婆だ。
絡まれるのは勘弁してくれと、美優を抱きかかえて逃げ出す私に老婆はこう言った。
「もう一度だけ話がしたい……あんたは強く願っている」
「……どういう事ですか?」
私は心の奥を見透かされた感じがして、思わず足を止めてしまった。
「後悔した時にはすでに遅い……もう声が聞けないと恐怖を感じている……」
「……」
「……この薬を買わないかい?」
老婆は懐から緑色の小瓶を取り出して私に手渡した。
「何ですか、これは?」
「一度だけ奇跡を起こす薬さ。これを飲めば、10分だけ昔の肉体に戻れる……あんたが満足したと感じたら、お代はそれ相応の額を頂くとしよう。逆に満足しなかったら、お代はいらないよ。……私の名前は福与。結果を楽しみにしてるね」
そう言って老婆は路地裏へと姿を消した。
「パパ、今のお婆ちゃん……消えちゃったよ?」
「ああ……とりあえず戻ろうか」
私は怪しい小瓶をポケットに入れ、美優と一緒に実家へと戻った。
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