ポチ

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学校から帰って、ランドセルを自分の部屋に放り込むと、タイチはすぐに遊びに出かけた。 「いってきます。」 「こらー、タイチー、宿題はぁ?」 母親が大きな声でタイチに問いかけた。 「あとでー。帰ったらやる。」 母親は溜息をついた。でも、元気になってよかった。そう安堵し、タイチの走る後姿を見送った。 母親は、ある違和感を感じた。タイチの手に、何かが握られている。 細い、ロープだろうか?縄跳びではないようだ。あんなもの、何をするんだろう。 不思議に思いながらも深くは考えなかったのだ。 その日の夕方、タイチは暗くなっても帰ってこなかった。 心配した両親は心当たりを方々探してみたが、タイチは見つからなかった。 両親が警察に捜索願を出そうと思っていた矢先、警察の方から家を訪ねて来たのだ。 その傍らには、うなだれたタイチの姿があった。 「タイチ!こんな時間までどこに行ってたの?」 両親はタイチを抱きしめた。 最初は警察に補導されたのだと思った。 「通報があったんです。犬の腐乱死体を引きずって歩いている子供がいると。」 タイチが手に持っていたのは、ロープではなく、ポチのハーネスだったのだ。 「ポチと散歩していたら、おまわりさんが来たの。」 タイチはそう言って涙ぐんだ。 タイチはポチを埋葬したあくる日に、ポチを埋めたあの場所に行って、一人ポチを掘り出していた。 あの小さな手で、小さなスコップでどれだけの時間を費やしたのだろう。 タイチはポチの死を受け入れたわけではなかったのだ。 動かないポチを毎日のように散歩させ、ついにはポチがまだ生きているかのように思い込むようになったのだろう。だから、最近、元気になっていたのか。 両親は、タイチにポチの死を受け入れさせるために、ポチの葬儀を執り行い、ポチを火葬し、墓を作り埋葬した。 するとタイチもようやくポチの死を受け入れられたようで、元のタイチに徐々に戻って行った。
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