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小道を真っ直ぐ歩くチェシャ猫を追い掛けながら、有栖は考えていた。
どうして、チェシャ猫しか居ないのか。
どうして、知り合いが居ないのか。
そして何故、私はここに居るのか。
幾ら考えたって分からない。
行き着く答えは同じだった。
すると突然止まったチェシャ猫にぶつかってしまった。
『っ、ごめんなさい!』
とっさに謝ったが返答が無い。
?と思った有栖はチェシャ猫の視線の先を追う。
そこには茨の壁。
『通れないね』
「通れるよ、アリス」
とチェシャ猫は茨の下を指差す。
よくよく見ればその先には小さな、本当に小さな扉。
『通れないよ。私そんなに小さくないもの』
「ポケットの中を見てご覧、アリス」
そう言われてポケットの中に何かあるか探せば小さなビン。
中には赤い液体。
そして"私を飲んで"と書いてある。
「それを飲めば通れるよ、アリス」
チェシャ猫はにんまり笑って言った。
きっと嘘だろうと、チェシャ猫を見るが動じない。
それどころか飲むのを待ってるようだ。
有栖は半信半疑ながらもそれを飲んだ。
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