願い事ひとつ

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「そんな事聞かれても 好きになっちゃったんだから 仕方ないじゃないですか…」 耳まで真っ赤に染めた久保を 今までとは違う気持ちで見下ろす 「俺、お前に嵌まりそう…」 「河辺さん?」 不思議そうに俺の顔を見る久保を 新しく芽生えた気持ちで見ていた 額にかかる髪を掬い流し その指で久保の顎を持ち上げる 仕返しとばかりに 顎下へ唇を落とすと ゾクソクゾクッ と背中にざわめきが走る ぐっと抱き寄せた手に力を入れ 耳元で囁いた 「彼氏にしてよ」 「…っえ! っえっ?! えぇーーーー!!!!!!????」 地を裂くような叫び声が式場を駆け巡った 「お、落ち着け!久保」 告白された女子像とは程遠い ムンクの叫びに近い表情をしたまま固まっている 「久保?」 もう一度腕の中の久保に呼びかけると 生気を取り戻した表情をし ガシッと おれの身体に手を回し 「もちろんです!!」 そう言った途端 バシバシッ と俺の背中を力強く何度も叩いた 地味に痛い。
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