願い事ひとつ

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そして俺はまたも車の助手席で命綱を、握りしめ 無事に帰還する事だけを祈っていた 「なぁ、久保」 「話しかけないでください!」 「運転変わろうか?」 「家族限定なんで無理です!!」 「…家族になってみる?」 「………」 「………」 キーーーーーーーーッ!!! 物凄い急ブレーキに身体が放り出されそうになった 命綱。。。 ありがとう 人気のない山道でよかった と安堵していると 「それ、本当に? さっきの彼氏の話も嘘じゃないんですよね?」 どこまで疑り深いんだろう… 久保が不安げに訊ねる 「嘘な訳ないだろ」 「よかったぁ。なんか夢みたいで…」 フフフッと笑い久保は、再びハンドルを握った 「安全運転でお願いします」 俺がそう言うと 久保は 「失礼ですね! 私はいつも安全運転です。」 真剣な顔で真っ直ぐ前をみてアクセルを踏んだ きっとこれから先も久保のペースに巻き込まれ続けるんだろうな 久保の気力がつきる前に 途中休憩をとるため 通り沿いのカフェへと立ち寄ると 「わぁー!可愛い」 カフェの入り口には綺麗に彩られた笹が飾られていた 「オシャレな飾り付けですね」 「あ、あぁ。」 久保は七夕飾りをしげしげと眺め とても嬉しそうにしている 「どうぞこちらの席へ」 店員に促され席へ落ち着くと 興味がメニューに移ったようで 目を輝かせていた
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