願い事ひとつ

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「紅茶のシフォンとアールグレイ」 「俺は、ブレンド」 互いに注文を終えると 店員がスッとペンと短冊を差し出した 「よろしければ、願い事を書いて飾り付けてください」 1年前がフラッシュバックする 「こういうイベントって素敵ですよね」 「え?あ、あぁ」 久保はペンを取りサラサラと短冊に何かを書き始めた 俺の考えすぎか… 去年の願いは叶った 今年も願いを書くのなら 自分の為の願いを書こうと思うが 急には願いなんて出てこない どうして久保は、こんなにサラサラと願い事を書けるんだろう? 俺に見られないようにと 必死で隠している様子がおかしくてたまらない どうせ、飾り付けるとき見られるのにな ふっと鼻で笑い 自分の為のたった一つの願い事を思案する 多くは望まない もし叶うのであれば… そっと短冊にしたため二人で飾り付けに行く あんなに隠して書いていた久保の短冊は願い事が丸見えで笑ってしまった 大きな丸文字で 【絶対に寿退社する!!】 ちょっとしたプレッシャーを感じる そんな俺の願いを彼女の短冊の横に飾った 「河辺さん、何書いたんですか?」
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