待つ女

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 その日から、たっくんは時々あたしの部屋にご飯を食べにくるようになり、最初は会社の名札しか見ていなかったので、藤本さんって呼んでいたけど、いつの間にか、下の名前で菜摘さんって呼ぶようになり、男女の仲になってからは、あたしを菜摘と呼び捨てにするようになった。  たっくんは今では配達のアルバイトは辞め、チェーン店の飲食店でアルバイトをしている。 「まかないとか一応出るんだけどさ、やっぱ菜摘の料理の方がだんぜん美味いな。」 そう言って、ご飯をたくさん食べてくれるたっくんがたまらなく愛しい。たっくんは、ほとんど自分の部屋には帰らず、まっすぐにあたしの部屋に帰ってきて、週のほとんどはあたしの部屋に泊まった。  ところが、バイト先を変わって1ヶ月経ったころ、だんだんと帰りが遅くなっていった。最近、帰りが遅いね、と言うとたっくんは、答えた。 「そうなんだよ。ホント、人使いが荒いバイト先だよ。人が休んだら、すぐ連勤させるからな。残業だよ。まあそれだけ俺が慣れて信頼されてるってことなんだけどな。」  お仕事頑張ってるんだね、たっくん。お疲れ様。今日もあたし、寝ずにたっくんを待ってるからね。 その日、たっくんは帰ってこなかった。ここ最近、料理が余って仕方ない。週の半分以上帰ってきていたたっくんは、週に3日、しばらくすると、2日、最終的には週に1回しか帰ってこなくなった。  よくよく考えてみれば、たっくんとあたしは別に同棲しようとか約束したわけでもなく、なんとなく一緒に居ただけなのだ。それであたしは幸せだった。たっくんに会えない時間がどうしようもなく、あたしを不安にさせた。たっくんからは、バイト先には恥ずかしいから絶対に来ないように言われていたのだけど、あたしはついに約束を破ってしまった。たっくんがバイトがはける時間を待って、あたしはバイト先の前で待っていたのだ。社員の通用口からたっくんが出てきた。今日は早く終わったのね。あたしはたっくんに駆け寄ろうとした。驚かせようと思ったのだ。
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