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「ああ、お帰りなさい。」
家に帰ると、そんな声が聞こえた。
勝手知ったる声は何処となく俺を安心させた。普段から良く聞く声というものはいやがおうにも安心感というものを感じるものなのだろうか。これが所謂「実家のような安心感」というものなのか俺には分からない。
「ご飯出来てるよ。食べて食べて。最近コンビニのお弁当ばかりであまり自炊してないでしょ?」
普段は寂しい台所に向かうと美味そうな料理が湯気を立てていた。目の前には笑顔の彼女。コイツのことは昔から知っている。家も隣同士で家同士も仲が良かった。
料理も裁縫も上手く、ついでに頭もよかった。身長が俺より小さかったので、俺はコイツの事を同い年の妹のように扱っていた節もある。
作られたおかずを一つ摘んで食べる。うむ、美味い。割と本当に料理店を開けるレベルだと幼馴染の贔屓目を抜きにして思う。
「それと洗濯物溜めすぎだしお布団も最近干してなかったでしょ?すっごく重かったんだから。」
痒い所に手が届く!これぞ幼馴染クオリティ!
これが所謂「所帯を持つ者の幸せ」という物なんだろうか。俺には分からないが、今やっている仕事が軌道に乗って余裕ができれば、そういう相手を探す事も吝かでは無いだろう。
用意された飯を完食する。ご馳走様でした。美味しかったです。
………さて、一心地付いた所で気になっていた事を聞くとしよう。
「どうやってこの住所を嗅ぎ付けた。俺はお前に引っ越しをする事も何も伝えずに出て行ったはずなんだが?」
「何言ってるの?奥さんなんだから貴方の事は何でも知ってるよ?今日だってこの時間に帰ってくるって知ってたからこの時間にご飯用意したんだし。」
やはり俺の幼馴染がストーカー気質でヤンデレくさいのは間違っている気がしてならない。
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