思想膿漏

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「詰まる所、それは君が思考して編み出した言葉でないにしろ、君が思考して選び出した言葉であるわけだね?」 Aは小さな体でこちらを見上げ、食いつくように言葉を発する。 先程までの退屈そうな態度とはうってかわって、その表情は生き生きとしたものになっていた。 「思考することは良いことだ。君のような人も、やはり思考を止めることは出来まい。思考は人間の持つ最大の娯楽であり…」 そこでAは顎に人差し指を当て、少し考える動作を見せた後に数回自分を納得させるように頷き、僕の目を真っ直ぐに見つめた。 「うん、やはり思考は人間の最大の欠点でもあるかもしれない。」 Aは部屋の中を歩き回り、四隅を順番に見つめながら軽快な足音を立てた。 「欠点…欠点か。とんだ欠陥品なのかもしれないね、人間っていうのは。」
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