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「君は今思考しているね。私に対して適切な言葉を、自分の持っている多くの言葉の中から見つけ出そうとしている。」
Aは頬杖をついたまま少し得意げに笑った。
「うぬぼれ屋だな君は。君の持っているその言葉、君だけの言葉というわけでもないだろうに。君はただ他人の言葉をまねして、コピーを作って、それをあたかも自分の言葉のようにして使っているだけだというのに。」
「そりゃあそうだ。共通の言葉を選ぶことでしか、人間は意思を通じ合わせることはできない。」
僕という存在がそう答えると、Aはまたつまらなさそうにため息をついた。
「君は存外、つまらない人間だなあ。何故思考をやめてしまうのか。何故『できない』と断定してしまうのか。それが一般常識だから?そう教えられてきたからかい?」
Aは立ち上がり、右手の人差指で自分の頭を指差した。
「思考するんだよ。思考をもってして思想を生みだすんだ。」
「自分を殺さないでいることは難しいんだけどね。」
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