思想膿漏

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あまりに理解に苦しむ発音と言葉だったため、私は思考のために一度出かけた言葉を唾と一緒に呑み込んだ。 「あひこくけそてのめ」 黙っている私に向かって、Aは再び同じ言葉を発した。 「私の発した言葉に対してどのような言葉を投げかけようと思考しているのならば、その必要はないよ」 Aは再び天を仰ぎ、椅子はそれに合わせて再びギィと鳴いた。 「今の言葉は、こんにちは、という挨拶のつもりで言った言葉なんだが」 「なるほど、しかし聴いたこともないような言語だった。一体どこの国の言葉だい?」 「どこの国の言葉でもないさ。これは今私が挨拶をしたつもりで発した唯の言葉だ。詰まる所、私だけが知っている、誰の真似でも無い私のオリジナルランゲージだ」
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