思想膿漏

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「つまらないつまらない。君程度の人間ならば、きっと排水溝に流してもなんら問題は無いだろう。」 「………」 Aの言葉に、僕は憤慨するでも呆れ返るでもなく、今までのAの言葉を自身の中で反復し、咀嚼していた。 Aは相変わらず古びた木製の椅子に深く腰掛け、こちらを見つめながら思考を行っているように見える。 「君は生まれてから今まで、どのような言葉を好んで使用してきた?」 「理知的な言葉、汚いボロ雑巾のような言葉、偉人の如何にも偉そうな有難ぁい言葉。その言葉の端々の何処にアイデンティティを感じてその言葉を使用してきた?」 Aの言葉の咀嚼が終わらぬうちに、僕の中に次々と新しい言葉が放り込まれていく。 「特に…意識したことはないかな。相手によっては汚い、君の言うボロ雑巾のような言葉も使ってきたかもしれない。」 Aは直ぐさま椅子から跳び上がるように立ち、霧のように私の前へと立ちはだかった。
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