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「お前は俺を勇者だと言うか。」
「ギルは勇者でしょ。」
「違う。俺は被害者なんだ。わかっているはずだ。シャルロット、お前は俺が勇者になったことを憐れんだはずだ。だって、お前は幼馴染みで、どんな状況下で俺が勇者に仕立てられたのかを知っているから。それなのに……それなのに、お前も俺のことを勇者と言うのか?シャルロット。」
ギルの慟哭に似た言葉が、シャルにはまるで声にならない叫び声に聞こえた。
シャルは目を伏せ、そっと息を吐く。
そして、前へと進み、ギルの胸元に自身の額を押し当てた。
「ギル、もういいわ……えぇ、わかっているわよ。私は貴方の幼馴染みですもの。」
「……ふん。」
離れるかと思っていたが、ギルはそのままシャルを抱き締める。
「今更だ。お前は裏切った。」
「えぇ、ギルはそう思うわよね……ごめんなさい。でも、わかってちょうだい。私は貴方の庇護下にないの。知っているでしょう?人は嫌いな人間にはどこまでも残酷で、残忍な性格をしていることを。」
「ふん。裏切りの事実は変わらないさ。なにを言われても裏切りの言い訳にはならない。違うか?」
「意地悪ね。」
シャルロットはギルバードの腕の中でじっとしていたが、城内が段々と騒がしくなってきた。
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