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人間側に光が差したのは、2年前である。
今まで魔導士にしか殺せなかった魔物を騎士見習いの少年が斬り殺したことで、状況が一変した。
実は、魔物は魔法で殺すしか手段がなく、一般兵士ではどうしても止めを刺すことが出来なかったのだ。
しかし、騎士見習いの彼が討伐部隊に派遣されて間もなく、本来ならば騎士見習いはまだ現場に派遣されないのが通例だが、その彼が偶然斬り倒した魔物が消滅した。
その事実はすぐに拡散し、人々は彼を『勇者』と呼び、人類の希望の光だと呼んだ。
そして、前例のない、騎士見習いの少年が騎士団団長の座に就くのはそれから1年後のことだった。
彼が騎士団団長に就いた数日後には魔王城に行き、魔王討伐部隊が編成された。
――
――――
「シャル!!」
走り寄る同僚が来て、掃除をしていた手を止める。
「なに?サラ、そんなに慌ててどうしたの?」
「ちょっとなに落ち着いているのよ!!聞いたよ!!なんで凱旋祭に行かないのよ!?折角勇者様を見られるっていうのに、勿体ないよ!!」
その話か、と苦笑し、再び掃除の手を動かす。
「いいの。元々凱旋祭の日は出勤日だし、人が溢れる場所にわざわざ行きたくないわ。私が人混みが苦手なのをサラは知っているでしょう?だから、いいのよ。」
「よくない!!全然よくないよ!!勇者様だよ?勇者様!!今をときめく旬な人で、クリスティーナ様とご結婚される前に見ないと勿体ないよ。」
その言葉で再び掃除をする手は止まる。
「私は行かない。これで、いいのよ……」
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