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ミラの訴えるような視線も、ライオネルの苦虫を噛んだような表情も、サラのいまだに諦めていない眼差しの一切を無視し、シャルは業務を終わらせていく。
時折聞こえる歓声が勇者一行の凱旋を知らせるものの、シャルは城下をただ一瞥するだけで、なんのアクションも起こさない。
そんなシャルの働きようを見ていれば、最早言うだけ無駄だと悟り、各々も業務に戻り始めた。
だからだろう、シャルが時折見せる城下に向ける視線が歓喜ではなく、憐憫のものだと誰も気付けなかったのだ。
一日中騒がしくも賑やかな雰囲気のまま凱旋祭が終了し、夜には勇者一行を労うために夜会が王族主体で開かれる予定がある。
昼間凱旋祭に参加していた使用人が夜会の担当になるため、今度は昼間に働いていた使用人の夜会参加が認められている。
しかし、誰もそれに出席することはない――一部の貴族子女を除いては。
昼間の業務はすべて最低人数で回し、それでも終わらずに残業まで発生したため、誰もが疲れていた。
夜会に参加する予定のサラでさえ、
「今日は無理。疲れた。もう寝る。」
と言い残し、部屋に一直線に向かったのだ。
シャル当然辞退し、自室に退去済みであった。
怒涛の業務遂行のためか、ミラとライオネルにも夜会参加を無理強いされなかったことはありがたかった。
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