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結局、水族館でしばらく時間を過ごして家に戻ってきた。完全に瑞樹のペースになってる。
本当に布団を帰る途中で買った瑞樹は空いている部屋を確認して勝手にそこに敷いた。
「約束だからさ、ここで眠るから」
そう言われ一瞬だけ、ほんの一瞬だけ……寂しいと思ってしまった。
「ねえ、今晩は外で食わない?」
「外食は……落ち着かない……」
「んー、そうかあ。静かな店だからさ、行こう?」
確かに今日一日中歩き回って、これから夕飯の買い物に出かけるのも辛い。
「行ってみてもいいか……な」
「良かった!もう予約してあるんだよね」
連れて行かれたのは派手な店ではなく、落ち着いた感じのレストランだった。
テーブルの上のキャンドルが仄かな明かりの輪を店内に投げかけていた。
「ここ、奏太を連れて来たかったところ。いつか会えたらきっと連れて来ようと思ってた」
「……」
嬉しそうな瑞樹の様子に何も答えられなくなる。俺のいない五年半の間、瑞樹も俺の影に縛られていたという事に気がついてしまった。
俺だけじゃない、互いが互いを解放してやらないと先に進めないと気が付いてしまった。
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