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瑞樹はあのまま諦めると思っていた、だからこれが現実なのかさえわからないのだ。
「俺があのまま引き下がると思ってた?まあ、いいや。行こう」
「ど……こへ?」
「いいから、ついて来て。歩いてここからすぐだし、二月に引っ越したんだ俺」
それから歩いている間の記憶さえ曖昧になってしまっている。
「ここは……」
「少しでもお前の近くにいれば、絶対会えると信じていた」
「なんで」
「まあ、運命?お前もそうだと思っていい加減折れろよ。改めて、俺と付き合って、奏太」
「何言ってるの?もう戻れないって」
「誰も戻れとは言ってないだろ。今、改めて交際申し込んでるんだけど」
「……俺に今恋人がいるって考えないわけ?」
「いるの?まあ、いいや。俺、順番待ちしてる余裕無いから割り込ませてもらうわ」
「どうして……」
「俺さ、かなり心が頑丈にできてるらしい。諦めるって言葉も知らないしな。そもそもお前、契約違反な。十日好きにしていいって言いながら手紙残して消えるとかないから」
「なんで……」
「なんでって?それ俺の台詞」
「どうしてここの大学がわかった……」
「お前の癖、変わらないのな。大学のパンフをゴミ箱に捨てたろ。気になる大学のページ角折ってあって、そしてこの大学のこの学部のところだけ二度折ってあった」
「……」
「あれ、お前の決定の意味だよな。高校の時に大学どこ目指してるか教えてくれなかったけど、俺の進学予定の学部だけ二度折りしてあった……」
「だけど……」
「だけど何?約束の残りはあと八日ある」
そう言い切られて、反論さえ述べられず後について歩く。思考が混濁し始めている。
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