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ふらふらと後をついて部屋に入ると、抑え込まれるように口付けられ、更に思考が乱れて頭の中で暴れ出した。
どうして瑞樹はここまで自分に固執するのか理解できないと思っていた。けれど、口づけられた瞬間に理解した。瑞樹以上に自分が、瑞樹に執着しているという事実を。どれだけ渇望していたのかを痛いほどに教えられた。
少しずつ澱のように溜まった想いは沈殿してまるで何もなかったかのように静かに心の底に溜まっていたのだ。それが今かき乱され、今は指の先まで混濁してしまった。
「瑞樹、どうして……」
「どうしても俺とは無理?」
「……」
「……そうか、じゃあきちんと、別れよう。奏太」
え、別れる?
そうだったのか俺は瑞樹から別れを言い出されないために逃げて、瑞樹の影を引きずりながら生きていたんだ。
瑞樹に言われてわかった。これが自分が怖かったこと。逃げるじゃなくて、きちんと終わりにするということ。
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