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てっきり、魔窟は俺との今後のことを話すのだと思っていた。
しかし、何かが違う。
礼拝堂に来て、確かに奴は今後のことを話し始めたが、そこに俺の名は出てこなかったのだ。
「シスター、俺はここを継ぐことに決めました。身寄りのない子供達を育てます」
綺麗なステンドグラスを見つめながら、魔窟が言う。
魔窟の突然の発表に何も聞いていなかった俺は驚愕した。
いや、俺だけでは無く、一番ビックリしたのはシスターだろう。
「宗介、それは本当ですか?子供達を育てるということは、とても大変なことなのですよ?分かっているのですか?」
シスターのこんな表情は初めて見た。
嬉しいが、大変さを知っている故に素直に喜ぶことが出来ない。
そんな表情だ。
歓喜に不安が混ざる。
「分かっています」
視線を移し、十字架の前に立つシスターの目をジッと見つめ、魔窟が頷く。
果たして、今、このまま俺は魔窟の隣に居て良いのだろうか?
「途中で辞めることは出来ないのですよ?」
己の本当の我が子のように、育て上げる自信はあるのか?
そう問われているようだ。
「分かっています」
尚も魔窟は頷いた。
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