午後十時十二分の朝焼け

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「正直、何を話したら良いのか分かりません。魔窟……いや、宗介くんは、とても優しい人間ですね。ご両親に似たのかもしれません。俺は何度も彼に助けられました」 特徴は親から子に遺伝する。 魔窟の優しい一面は親譲り。 黙ったままの墓標を見つめ、俺はハッキリと言葉を紡いだ。 「宗介くんの中には、ちゃんと、あなた方が残っています。ちゃんと、あなた方の優しさや温もりが残っています。──────…………っ……あの、……すみません、俺、あいつを好きになっても良いでしょうか?」 込み上げる感情を必死に抑えつけ、問い続ける。 「一緒に生きても良いでしょうか?幸せになっても良いでしょうか?」と。 すると、不思議なことが起こった。 日が沈み始める数分前、一度、完全に風が止まったのだ。 数秒後、温もりを持った海の香りのする風に頬を優しく撫でられ、「ありがとうございます」と言って、俺は魔窟の両親の墓を後にしたのだった。 だから、今、こうして俺は魔窟と一緒に居られるのだ。 「あなたで良かった……」 また、布団ごと俺を強く抱き寄せ、魔窟が呟いた。 窓から部屋に入ってきた陽の光が眩しい。 もう二度と来ないんじゃないかと思っていた朝が来た。 俺も魔窟も生きている─────。
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