午後十時十二分の朝焼け

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◆ ◆ ◆ 寝惚けた頭が徐々に冴えてくる。 「今日は何処に行きますか?」 今にも眠りに落ちそうな魔窟にボソリと言われ、俺はハッとした。 大変だ。 余りに和やかな雰囲気に俺は重要なことを忘れていた。 「……だ」 身体を起こし、青褪める。 魔窟の方を向く動作もカクカクという音がしそうだった。 「はい?」 眠気を我慢した魔窟が、不思議そうな顔をしている。 お前は良いんだが、俺は悪い。 今日は快晴、そして、水曜日。 つまり…… 「遅刻だ!」 慌てて、俺は簡易ベッドから転がり出た。 夢であって欲しかったが、夢でもなんでもない。 これは現実だ! 「若人さんも、また休めば良いのに」 焦ってスーツやらなんやらを身につける俺の背に魔窟が呑気な台詞を投げ掛けて来た。 今から行ったって遅刻なのは俺だって分かっている。 それでも、俺は休む訳にはいかない。 「俺が休んだら、お前が戻ってくるための準備が出来ないだろうが?ちゃんと、仕事まとめて片付けとくから」 魔窟の方に首だけを向け、手の感覚だけで、いつものようにネクタイを結ぶ。
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