終わりで始まり

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このタイミングだったからこそ、なのだ。 きっと、俺と魔窟には闇が必要だった。 そう思うと少しだけ、心が救われる。 「俺、下に行って守衛さんに鍵借りて来ますね」 「おう、頼んだ」 いつものことだから、俺はオフィスから出て行く魔窟を何気無く見送った。 まだ十時前だ。 大丈夫、まだ発作は出ない。 だが、魔窟の発作は相変わらず毎日続いている。 惨事を忘れたいと思う心に両親のことを忘れたくないという気持ちがぶつかり、発作が起こるのだ。 少しでも嫌な記憶が薄れれば発作は起こらなくなるだろう。 俺が代わりに覚えてるからと言えれば良いのに。 「お、消えた」 この部屋の電気は管理用メインパネルで操作することによって消すことが出来る。 それがあるのは一階の守衛室。 つまり、魔窟が守衛室に着いたということだ。 これも、いつも通りのこと。 暗いと思っていたオフィスの外で飲み屋の看板がギラギラと光っている。 それも一個か二個だが、見るとホッとするのだ。 やっと、今日が終わる。 「……ん?」 帰ろうと立ち上がった時だった。 俺の黒い携帯が鳴り出した。 電話だ。
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