終わりで始まり

8/18
前へ
/244ページ
次へ
画面を見ると『非通知』という文字が表示されている。 直ぐに、忘れていた記憶が思い出された。 魔窟に「……御薬袋さん、俺が戻って来るまでに消えていてください」と言われた、あの日。 そう、あの日も確か、非通知で電話が掛かってきていた。 魔窟だと思っていたが、やはり、魔窟だろうか? いつからか、携帯でも非通知設定が出来るようになったのかもしれない。 「はい、もしもし?」 騙されないぞ?という気持ちを持って、俺はハッキリとした口調で電話に出た。 しかし、また、まただ。 反応がない。 悪い業者か、それとも、魔窟の悪戯か、それ以外か。 「もしもし?悪戯なら切りますよ?」 相手が誰でも良いように敬語で話す。 見知らぬ誰かなら間違いだと思って切るだろう。 名前が知りたいなら、声を出して訊ねれば良い。 見知らぬ誰かなら…………、良かったのに。 「……ははっ」 微かに電話口から笑い声が聞こえた。 男の声だ。 魔窟では無い。 違う。 猫田さんでも無い。 違う。 もう、これ以上、聞くべきでは無い。 俺の頭の中で警鐘が鳴り始めた。
/244ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1064人が本棚に入れています
本棚に追加